かるがもGO! カルガモの生息地に関する調査報告書
多くの人にはどうでもいいことだと思うのですが、私がこれまで何の疑問もなく「カルガモ」だと思っていた生き物が「マガモ」だったということが判明したんです。
私はイギリスで見た、首から上が緑色のカモをカルガモだと思ってアイコンにも使っていたのですが、それは紛うことなきマガモの特徴なんですよね。
そもそも名づけの由来が
『ヨーク大学の湖にいる“カルガモ”がかわいいから』
とかいう安直ブログにとっては、ちょっとまずい状況です。
じゃあアイコンの写真をマガモからカルガモに変えればいいじゃない、と思うかもしれませんが、
Anas zonorhyncha (カルガモ) の生息地
IUCN Red listより
BirdLife International and NatureServe (2014) Bird Species Distribution Maps of the World. 2015. Anas zonorhyncha. IUCN Red listより
The IUCN Red List of Threatened Species. Version 2016-2 http://maps.iucnredlist.org/map.html?id=22736042
つまり、ヨーロッパはイギリスのヨーク大学で、かわいいカルガモなんて見られるはずがないのです。
これは完全に私の勘違いが原因で、きっとカモ目カモ科マガモ属の分類に詳しい人から見たら、とんだお笑い種だったことでしょう。
これはもう、ブログのタイトルを
「マガモリポート」
「かるがもリポート」という名前もそれなりに気に入っているので、いろいろ矛盾してはいるのですが、もう少しこのまま続けさせてくださいm(_ _)m
というわけで今回は、この受け入れがたい事実について調査する過程で、限定的に詳しくなった、カルガモとマガモについてのお話です!
◆見分けよう! マガモとカルガモ
みなさんに私と同じ間違いを繰り返してほしくないので、マガモとカルガモをしっかりと見分けられるようになりましょう!
日本で見られるカモは約46種類もいるらしいんですけど、とにかくマガモとカルガモが見分けられたらいっか! というスタンスでご紹介します。
カルガモ
![]() |
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Anas_zonorhyncha.jpg |
黒褐色。性別、季節によってもほとんど色が変わらない、変化に乏しいカモ。
顔は割と白っぽくて、目のふちに黒い線が入る。
くちばしが全体的に黒くて、先っちょだけ黄色いのが特徴。
ちなみに英語名はSpot-billed duck。
spotは「ブチ」、billは「くちばし」なので、「ブチのあるくちばしを持ったカモ」という意味ですね。
私は、「暗い中スポットライトを当てたように、くちばしの先が黄色いカモ」と覚えてます。
※ただし、実際のSpot-billed duckのspotはくちばしの付け根の方にあるspot(仲間のインドカルガモさんとかが持っているオレンジ色のブチ)を指すらしいので、正しい覚え方とは言えないので注意!
マガモ
![]() |
https://commons.wikimedia.org/wiki/ File:Anas_platyrhynchos_male_female_quadrat.jpg |
大きさはカルガモとほとんどいっしょ。
首から上が光沢のある緑色になるのが一番の特徴ですが、これはオスの生殖羽ver.。
メスは地味な茶色だし、オスも繁殖期が過ぎると割と地味になります。
くちばしは全体的に黄色やオレンジ色で、黒っぽくくすんでいるのもいる。
北半球の冷帯から温帯まで幅広く分布。日本はもちろん、世界中で最も簡単に見られるカモの一種です。
Anas platyrhynchos (マガモ)の生息地
Wikimedia commonsより
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Mallard_Duck_Range.png
オスの美しい緑色の羽は、昔から特徴的だと思われていたらしく、日本では昔から「青首」の名前で呼ばれてきたよ!
◆一年の過ごし方
体格はそっくりなマガモとカルガモですが、一年の過ごし方はかなり違うようです。
まず、カルガモが一年中日本に住み着いているのに対して、マガモは冬にやってくる渡り鳥です。っていうか、カルガモ以外、日本で一般的に見られるほとんどのカモが冬の渡り鳥です。
マガモは、日本で夏を越すものもごく一部いるようですが、北海道や高原地帯など、涼しく過ごせるところ限定のようです。
また、渡りカモのみなさんは、北の国に帰ってから子育てをするので、日本で子育てをしているのは基本カルガモだけです。
別にカモをちゃんと見分けられているわけでもないのに、ニュースで『“カルガモの”親子が引っ越しを~』と限定しても問題にならないのは、マガモもコガモもヒドリガモも日本で子育てをしないからなんですね。
ちなみに、ヨークでは4月の終わりごろ~7月ごろにマガモが子供を連れて歩いていました。
マガモが繁殖できるあたり、やっぱりイギリスは日本より緯度が高いんだなー、と今では思います。
マガモの親子@ヨーク大学
(2014.7.6)
(2014.7.6)
◆カルガモWatching 実践編
一般的に、多くの渡りカモがやってくる10月から4月の冬の時期が、カモの観察に最適な時期と言われています。
しかし、逆に言えば、夏は他のカモに惑わされず、カルガモだけを観察できるベストシーズンいうことですよね!
と思った私は、カルガモの写真を撮るべく、早速自転車で賀茂川へ。(撮影日は2016.8.25)
しばらく走ると、川面にぷかぷか浮かぶ、複数の姿を見つけました。
いました! 簡単に見つかった!
カルガモ!
……あれ?
Spot-bill じゃないぞ!?
こいつとか、もはやお前は誰なんだ状態。
困惑しながらも、とりあえず写真を撮っていると、遅れてぺたぺた近付いてくる影が…

す、Spot-bill だ~!
見てください、このくちばしの先の輝かんばかりの黄色!
まさにカルガモ! っていうこいつらと比べると、さっきまで見ていたカモたちが全然違う種類のカモだということがはっきりとわかります。何というか、マガモっぽく見えるんだけどなあ。
夏にマガモは北の国っていうのは頭に入っていたんですが、じゃあカルガモでもないこいつらは何!?
◆カモたちのハイブリッド事情
帰ってからインターネットでいろんな人の意見を見ていると、夏の平野部にマガモが残っているという事態は、ないわけではないけど、みんなわりと否定的だなーという印象でした。
もっと可能性が高いものとして紹介されていたのが、他の種類との交雑種。
一番に疑うべきは、アヒルとアイガモの存在。これらはマガモとそっくりな見た目になることもあるようです。
アヒルは昔、野生のマガモから作られた品種で、その中でも御先祖様の特徴が色濃く出たアオクビアヒルはマガモとそっくり。そして、マガモから作られたアヒルにマガモを掛け合わせたものがアイガモ。
そんなアヒルやアイガモが野に放たれることがあり、彼らは渡りをしませんが、見た目はマガモにそっくりなのでマガモと間違えられやすいようです。
さらに、マガモ×カルガモってこともあるらしい。
マガモ×カルガモで、マガモっぽい見た目になったのがマルガモ、カルガモっぽくなったのがマガモカルっていうらしい。ほんまかいな。
さらにさらに、元はマガモのアヒルや、マガモから作られたアヒルにマガモを掛け合わせたアイガモと、野生のマガモやカルガモが交雑することもあるらしくて…ひえ~、頭がぐるぐるしてきたぞ~。
◆カルガモGO!
さて、7月にポケモンGO! がリリースされて、大人気となりましたね。
今回はせっかくのカモ特集ということで、赤版・緑版のころからの人気ポケモン、カモネギの話を。
ポケモンずかん http://pokemon.symphonic-net.com/ より
ポケモンには、それぞれの特徴に合わせて「○○ポケモン」っていうのが付けられていますが、カモネギは何を隠そう「かるがもポケモン」なんです!
「みずどりポケモン」でも「かもなべポケモン」でもなく、「かるがもポケモン」。
素晴らしい限定っぷりですね!
全身茶色、雌雄同色っていうのは、まさにカルガモの特徴を押さえていますよね。きりっとまゆ毛のように見える黒い線は、カルガモの目のあたりの模様を表したのかな。
残念ながらくちばしが全部黄色で、spot-bill な特徴から外れてしまいますが、全体的によくカルガモ感が出ているなあと思います。くちばしの問題を考慮すると、ちょっとマガモカルっぽいのかも。
さて、そんなカモネギですが、ポケモンGO! では、アジア地域限定ポケモンに指定されているようですね。
限定のわりに別にレアでもないとか、これは「日本なんて“いいカモ”だ」というゲーム会社からのメッセージなんじゃないかとかいう意見もインターネットでは見受けられますが、実際のカルガモの生息地を考えるならば、むしろ「かるがもポケモン」であるカモネギが、アジア地域以外に出現する方がオカシイのではないでしょうか。
Anas zonorhyncha (カルガモ) の生息地
ただし、現実に鴨鍋にしておいしいのは、カルガモではなくマガモです。
◆おわりに
みなさんは、ポケモンGO! やっておられるでしょうか。
私の場合、現実世界にポケモンが出てくるなんてロマンだなあと思っていたのですが、そういえばまだガラケーだったのと、頼みの綱のタブレットもバージョンが古いとかなんとかで、アプリをダウンロードすることすらできませんでした(ゲームは友達のすまほでちょっと体験させてもらいました。楽しかった!)。
先日のことですが、賀茂川でカルガモを見つけたものの、遠くにいて写真に収まらないなあと思っていると、隣におばあちゃんがやってきて、突然袋いっぱいの食パンをばらまきはじめました。
次の瞬間、空にはトンビとカラスが舞い飛び、地上はハトで埋め尽くされ、カモたちは対岸から駆けつけ、それを見た散歩中のおじさんはびっくりして立ち止まるわ、親子連れは寄ってくるわ、私は一銭も払ってないけど「写真撮ってもいいですか…?」と聞いたら、快くOKしてくださったりして、ちょっとポケモンGO!のルアーモジュールみたいだなあと思いました。
また、「カモ類の識別」というのが、大変深遠なる世界であるということがよくわかりました。オスメスの見分け方が「虹彩の色の違い」ってどういうことなんでしょう。素人が軽率に踏み込むと、帰ってこれなくなりそうです。
カモは最も身近にして、最も奥深い鳥なんだそうです。彼らは性別、季節、成長度合い、そして交雑などで少しずつ姿を変えるらしく、玄人はその見分けを楽しむそうですが、私の場合はもうこれくらいで勘弁してほしいです。
それでは、たくさんの渡りカモたちがやってくる前に、みんなもカルガモ ゲットだぜ!
参考文献・Web
氏原巨雄, 氏原道昭, 2015, 『日本のカモ識別図鑑』 誠文堂新光社.
氏原巨雄の雑記鳥
http://redshank2.exblog.jp/
カルガモ -wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%82%AC%E3%83%A2
マガモ -wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%AC%E3%83%A2
↑それぞれの英語ページも参照
『ポケモンずかん』
The IUCN Red List of Threatened Species
http://www.iucnredlist.org/