セミデタッチドハウス考

アジア出身の私なんかは、こちらできれいな街並みを見ると、つい「ヨーロッパ風の街並み!」などと言ってしまいますが、家の建て方や全体の景観などは、ヨーロッパのそれぞれの国、それぞれの街でかなり違うようです。



↑近所。

最近友達になったドイツ出身の女の子が寮の近くの村を歩いているときに、「可愛い街並みね。おとぎ話の世界みたい」と言っていました。なんとMärchenの本場も認める可愛らしさ! ドイツの街並みはこんな感じじゃないの? と訊いたところ、また少し違うんだそう。

ということで今回は、ヨーク周辺でよく見かける家の種類についてご紹介しようと思います。



こっちの家の特徴としては、


  • そんなに大きくない(日本の家はウサギ小屋とか言われることがありますが、こっちはドールハウスのようです)
  • そんなに高くない(大体2階建て。3階以上だと高い印象)
  • 1つ1つの家の区切り方が日本と違う


という感じです。では実例を見ていきましょう。


Detached House(デタッチドハウス)

日本でいうことろの一軒家。お庭に気合いが入っているお宅が多い。






デタッチドハウスはまあヨーロッパ風の(また言ってしまった)おうち、という感じなのですが、次のがイギリスに来てから初めて見た! というタイプのおうちです。


Semi Detached House(セミデタッチドハウス)

Detachedとは独立した、というような意味。つまりSemi Detachedとは半分独立した家ということになります。
はあ、半分独立…?




実はこのタイプの家は、この1つの建物に2家族が住んでいるのです。
というか、「2つの独立した家が壁の一面を共有し、くっついている」という感じです。




ドアが両側に2つあるのがお分かりいただけると思います。窓も間取りも完璧なシンメトリー。ドアの色がかろうじて個性の違いを醸し出していますが…

内側の壁は完全に閉ざされていて、両者の行き来はできないのだそう。
住んでいる2家族も親戚ではなく全くの他人なのだそうで、建物としては1つでも、独立した2つの家なのです。

では、もっと沢山くっつけていきましょう!

Terraced House (テラスハウス)

英国式長屋。セミデタッチドハウスよりもっとたくさんの家がくっついた状態。この場合、「2階建ての家が4軒くっついている」状態です。ストリートに面して一直線に壁のように並びます。つながる家は3つ以上無限大です。それぞれの家にドアがあり、中には独立した階段があって、大体1階と2階にベッドルームが2つずつと、キッチン、リビングなどがあります。裏口があって、小さなBack yardが付いています。




もっと沢山くっつけると…

Back-to-back Terraced House(背中合わせのテラスハウス)
これは裏庭を犠牲にして、テラスハウスの後ろにもうひとつのテラスハウスをくっつけたもの。このタイプの家は、産業革命の影響で18世紀・19世紀に急激に産業が発達した都市(バーミンガム、リバプール、リーズ、マンチェスターなど)で、労働者向けの住宅として作られました。
ほとんどの家は、前面以外の3面を他の家と共有した状態、当然窓もありません。
これは相当不衛生だったそうで、その後の住環境改善事業の中で、ほとんどが取り壊されてしまったそうです。ただ、リーズにはかなりの数が残っていて、未だに住居として使われているそうです(wikipedia)。


次は縦に積み上げる系。


Flat(フラット)

日本でいうアパートやマンションに一番近いもの。これまで紹介したものは縦に家と家の境界線を切っていく感じでしたが、フラットは文字通りFlat(水平面)で区切る感じ。







ちなみに、私の英語の先生的には

セミデタッチド≧デタッチド>テラス>フラット

のような評価らしいです。デタッチドはもちろんいいんだけど、やっぱり値段は高いそう。
セミデタッチドやテラスは、他と接している分壁代を節約できて安いらしい。
うーん、壁を節約するって発想はなかったなあ…

また、セミデタッチドに住んでいたという他のイギリス人に聞いたところ、もう一つの家と熱を共有してちょっと暖かいらしい。気分的に? いえいえ、実質的な問題です。ただ、隔てているのは壁一枚なので、音は結構聞こえるそう。それはどうしようもないですね。

それにしても、横方向に家をくっつけるというのは、現代の日本人からしたら少し不思議な感覚です。

なんで家を横に並べてくっつけてるんですか、日本では平面で区切るフラットが主流で、しかもどんどん高層化しています、と話したら、先生はそんなこと初めて考えた、というような顔をして、

「でも…、庭はほしくないですか?」

と至極大真面目な顔で答えてくださった。
物置にしたり洗濯物干したり野菜を育てたりするBack garden/yardは必ずほしいし、見せ庭たるFront gardenもできたらほしい…というような感じらしい。そこまで庭が大事か。

確かにフラットだとほとんどの家は庭を持つことが不可能。
テラスハウスは前庭がない場合もありますが、小さなBack yardはたいていついています。

どうやらイギリス人は土と触れ合って生きていきたいらしいです。ロンドンみたいな大都市では、そうわがままも言っていられないでしょうが…

その他。
テラスハウスは古いものも多く、自動車の所有を計算にいれていない場合が多々あります。
しょうがないので路上駐車です。

ずらーっ!!


庭は庭として使うためにあるので、スペースがあるように見えても車は路上駐車です。


















ちょっと感想。


  • こうやって見ると、イギリスの家(ヨーク周辺の家?)はくっつき率がはんぱないなあと思います。



  • 逆に日本の都市部、たとえば京都の家なんか、もうくっついちゃえよ! と言いたくなるほど接近しているのにくっついていないことがありますよね。意味ないでしょそれ、と言いたくなるような狭い隙間に無理にブロック塀入れたり。



  • どっちかっていうと、「借家だし」と割り切れそうなテラスよりも、2つの家族がくっついて住んでいるセミデタッチドの方が感覚的に不思議です。いろいろ利点があるのはわかるけど、この微妙な共有感はなんか謎です。



  • いくつか不動産のサイトを見たところ、土地の所有の感覚が日本と違うようなので、それが感覚のズレの原因かもしれません。



  • 日本はその土地を住民が「所有」しており、子や孫に受け継いでいくという感じ、イギリスの土地は「借りもの」という感じだそう。



  • あと、現実問題としては湿気とか暑さとか。



  • 建物自体、個性豊かかって言うとそうでもないです。みんな似通ったデザインで、ドアの色や出窓の形でマイナーチェンジしている感じ。



  • その代わり、インテリアとか庭とか、永久的ではないところで勝負するイメージ。その点日本は、一軒一軒、家本体にこだわっているよなあと思います。



Wikipediaは結構参考にしているのですが、英語版と日本語版でテラスハウスについての記事の量と内容がだいぶ違って、これは気持ちの入れようの違いだなあと面白かったです(笑) 日本にはどうやら馴染まなかったらしい。

参考web page
Terraced house  Wikipedia
http://en.wikipedia.org/wiki/Terraced_house
テラスハウス Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%8F%E3%82%A6%E3%82%B9


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