ツール・ド・フランス 2014 in ヨーク! ~黄色とツール・ド・フランスのお話~

 楽しかったFIFAワールド・カップ2018も終わっちゃいましたね…。前回の2014年大会は、ちょうど私の留学とかぶっていて、他の日本人留学生といっしょに、共用スペースに集まって応援していたのを覚えています。決勝ステージに日本が残れなかったことを中国の友人に慰めてもらったり、イングランドのグループリーグ敗退が決まった日の夕方、寮のあちこちから悲鳴が聞こえたりしたことを思い出します。

 あと、この時期のイギリスのスポーツの話題といえば、ウィンブルドンとか…。いろいろなスポーツのイベントがありますが、ワールド・カップと並んで思い出深いのが、ツール・ド・フランス!

 なぜフランスの自転車レースが? と思われるかもしれませんが、実は2014年は私が勉強していたヨークの街を、レースが通過していったんです!

 というわけで今回は、世界最大の自転車レースと、大イベントを迎えたヨークの街についてご紹介します!


◆ツールが街にやってきた!


「今度の日曜日ヒマ? みんなでツール・ド・フランス見に行こうよ!」
 寮の友達からそんな誘いを受けたのは、大学の夏休みが始まってすぐのことでした。
「ツールド…? よくわかんないけど行くよ!」

 そのときはよく知らなかったのですが、ツール・ド・フランスとは、フランスを中心に行われる世界的な自転車レースのこと。毎年7月の約三週間、街から街へ移動しながら、約3500kmもの距離を走るといいます。


Photo by Josh Hallett

https://www.flickr.com/photos/hyku/7623525492


 フランス語で「フランス一周」を意味する名前のとおり、コースは基本的にフランス国内。最終的なゴール地点はパリと決まっているようですが、コースの一部にベルギーやドイツなどの周辺国を含む場合があります。

 そして2014年はなんとドーバー海峡を越えて、イギリスがコースの一部に(2007年以来7年ぶり2回目だったらしい)! しかも、21日間の戦いのスタート地点として、ヨークシャーが選ばれたのです。



 見てくださいこの地図。太線部分が実際に自転車でレースをした部分なのですが、これはもうイギリスというよりはヨークシャーを走りたかっただけなんじゃないかというようなルートですね!

 イギリスにツールがやってくるの自体が2回目、ましてやそんな一大イベントのスタート地点に自分たちの街が選ばれるなんて! とヨークシャーの人たちは大喜び。

 私がいたヨークも、選手たちが通過する2日目は街がお祭り騒ぎとなりました。

◆黄色とツール・ド・フランス

 ヨークは2日目のスタート地点ということで、寮のみんなと徒歩でルート沿いの道へ。

 そのときに驚かされたのが、街に黄色い色があふれていたこと!






 実は、黄色はツール・ド・フランスにとって、非常に重要な意味を持つ色であるのです。

 ツールは約3週間の日程で21ステージを戦います。選手たちはその都度一斉にスタートするため、一番乗りでゴールする人は毎回変わる可能性があります。そのようなステージ優勝ももちろん素晴らしいのですが、最大の名誉とされているのが、全ステージの総合タイムで最速であった選手におくられる「個人総合優勝」

 順位は毎ステージごとに更新され、それまでの個人総合タイムで1位となった選手が、翌日のレースでマイヨジョーヌ(フランス語で「黄色いジャージ」)を着る権利が与えられます。つまり、黄色いジャージを着て走っている選手は、前日までの総合タイムでトップに立っている人ということですね。

photo by ASO
マイヨジョーヌおめでとう!
毎ステージ後、このような表彰式があるようです。

 このジャージに一度でも袖を通すことは、参加選手たちにとって大変名誉なこと。そのため黄色はツール・ド・フランスを象徴する色となっているそうです。

 ヨークの街に黄色いモチーフがあふれていたのは、そういう理由だったんですね。


 あと、特別なジャージは他にもいろいろあって、白地に赤の水玉ジャージは山岳賞、緑色ジャージはポイント賞なんだって。黄色い旗や飾りに混じって、そういう色のモチーフもたくさん目にしました。

◆ツールが街にやってきた! 実録編

 私たちがスタンバイした住宅街は人でいっぱい。



 ご覧のとおりみんな首を長くして待っているわけですが、実際に選手たちが来るにはかなり時間がかかるのです。選手たちがやってくる前に、本当にたくさんの車が通り過ぎます。




サポーター企業の宣伝カーとか


キャラバン隊というらしい。
趣向をこらした車で、キャップやゴム製のストラップなど、企業名の入った小さなグッズを沿道の人たちに配りながら進みます。










あと、これは選手たちが通った後だと思うけど、スペアの自転車を満載した出場チームのサポートカー。










 選手198名※に加えて、主催者、スタッフ、メディア、スポンサー、キャラバン、警察、医療関係者など、一時スタッフを含めて、レースといっしょに動く人数は4,000名を超えるとのことで、ツールがいかに巨大なイベントであるかがわかりますね。

※2014年当時。現在はルールが少し変わったようです。

 関係車両の連続で少し待ちくたびれてきたときに、急にコース前方でざわつきが!

あっ、マイヨジョーヌだ!



















 …と思ったら、黄色い服を着た普通の人だった(笑) 沿道の人たちから拍手を受けてました^^

 そしてついにその時が。先ほどとは比べ物にならないざわめきが起こります。

来たー!! 
声援とともにカメラを構えます。


 あっ、黄色いジャージの人も、赤い水玉のジャージの人も写ってる! これはなかなかいい写真なんじゃない!?

 スタート地点からそれほど遠くなかったせいか、まだ横一線という感じで、それこそ風のように一瞬で去って行きました…

 私たちのポイントを通り過ぎた後、コースは市の中心部へ。こんな感じだったらしい。

本当に一瞬のことだったけれど、ヨークの街が興奮に包まれた瞬間でした。

Plant The City Yellow

 レースは一瞬の熱狂でありましたが、私がその日一番感動したのは、家の窓辺や通りに黄色い花があふれていたこと!






 実はヨーク市は、王立園芸協会と協力して「黄色い花を植えてツール・ド・フランスに参加しよう!」というキャンペーンを行っていたそうで、前庭に黄色い花を植えたり、店の前にハンギング・バスケットを下げたりすることを推奨していたのです。

 その一環として実施したのが、80種類を超える黄色い花の種の無料配布。しかも、レースが行われる週末にちょうど綺麗な花が咲くようにするには、どのように管理をしたらいいかのアドバイス付き!

 種が配られたのは、ツールが始まる約3か月前の3月終わりごろ。そのころに住民が種をまいて、ツールがヨークにやってくるまさに76日、こうやって綺麗な花を咲かせました。


 ヨーク近郊の園芸農家さんがフレンチ・マリーゴールドの種を1500袋寄付してくれたとか、ヨークの人たちが何カ月も前から黄色い花の種を植えて、わくわくしながらツールを待ってたのかなあと思うと、ロマンチックでかわいいですね。





 キャンペーンの一環でガーデニングのコンテストも行われていたそうで、個人宅部門やBB部門、学校部門など、様々な人が参加をしていたようですよ。


◆ツールの楽しみ方?? 番外編

楽しみ! という思いがあふれてしまったのか、ヨークシャーではツールに合わせて羊を黄色くしちゃった人も…!

150 Yorkshire sheep dyed yellow in Tour de France sponsorship stunt
https://www.prexamples.com/2014/07/150-yorkshire-sheep-dyed-yellow-in-tour-de-france-sponsorship-stunt/


 今回調べているうちに見つかったので、せっかくなので紹介。みんな思い思いに、ツールで盛り上がっていたみたいですね^^


◆おわりに 


 ヨークが黄色い花であふれたあの日、園芸っていうのは、すごく想像力があって素敵な行為だなあと思うようになりました。

 まだ春になりきってもいない時期に、夏の自転車レースの日にみんなで笑って眺めることを想像して植える。それにあれだけの住民が参加したのかと思うと、胸が熱くなります。

 大変心のこもった計画性というか…。「楽しみにする」という気持ちそのもののような気がしますね。

 あまり計画性のない私が、日本に帰って来てからベランダでちょっと花を育て始めたのは、このときの体験にかなり影響されてるよなあと思います。

photo by David Dixon  http://www.geograph.org.uk/photo/4058518

 さて、ツール・ド・フランスはちょうど今の時期、NHKBSでほぼ毎日0時過ぎからデイリー・ハイライトをやっているので、興味がある人は見てほしいな。(と、書いてるうちにシーズンが終わっちゃいそうです。ごめんなさい)

 一つ一つのコースが長くて、それが21ステージあることや、チーム戦であることなどから、単に全力で走るんじゃなくて、全体を見通しての駆け引きだったり、余裕なんかが生まれているような気がします。

 たとえば、その日のコースがある選手の故郷だったときは、ちょっと彼に花を持たせてあげたりとかね。何回か見ていると、何となく主要な選手の名前やチーム名なんかも覚えてきて面白いです。

 あと、画面に映り込んだ小さな村に、黄色い旗がはためているのを見ては、やってるなあと楽しく思ったりしています。

 もしツールのニュースを見かけたときは、そんな風景にも注目して見てもらえたら嬉しいです^^


参考文献・Web


ツール・ド・フランス Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%84%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9

2014 Tour de France
https://en.wikipedia.org/wiki/2014_Tour_de_France

Cyclist SANSPO.COM
今さら聞けないツール・ド・フランスの基礎知識 30億人が熱狂する一大イベントとは?
https://cyclist.sanspo.com/262511

Gardeners urged to turn Yorkshire yellow for the Tour de France
https://road.cc/content/news/96944-gardeners-urged-turn-yorkshire-yellow-tour-de-france

Plant York yellow and win prizes in floral Tour de France celebration
https://www.yorkmix.com/entertainment/plant-york-yellow-and-win-prizes-in-floral-tour-de-france-celebration/

150 Yorkshire sheep dyed yellow in Tour de France sponsorship stunt






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